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AIが変えるプロモーションの最前線 企業マーケティングを革新する最新のAI活用事例

概要

AIの進化により、企業のプロモーション手法が大きく変わりつつあります。AIが生み出すバーチャルキャラクターの活用、ユーザーごとに最適化されたコンテンツ生成、双方向のインタラクティブな体験など、新しいアプローチが次々と登場。これまでの一方的な広告や情報発信から、よりパーソナルで没入感のあるコミュニケーションへとシフトしています。

事実、2024年のPR TIMESプレスリリースではキーワード「生成AI」の出現数が前年の2.9倍に急増し、急上昇ワードの第1位となるほど関心が高まっています。本記事では、こうしたトレンドの中で実際に展開された最新のAI活用事例をご紹介します。

※弊社事例ではないものも含まれています。

目次

AIタレントが主役に。新時代のキャラクター戦略

ブランドの「顔」として活躍するのは、もはや人間だけではありません。生成AIによって生み出されたバーチャルヒューマンやAIタレントが、企業のメッセージを伝える役割を担い始めています。2024年の日本でも、AIが生み出したモデルやキャラクターを起用したユニークなキャンペーンが登場しました。

野村グループ:「すばらしい変化のそばに。」キャンペーン

参考:野村グループ創立100周年を記念したTVCMにバーチャルヒューマンのimmaが登場

2025年、野村ホールディングスは創立100周年を迎えるにあたり、「すばらしい変化のそばに。」をテーマにした記念キャンペーンを展開しました。

過去の伝統と未来への希望が交差するこのプロジェクトでは、近未来を象徴するバーチャルヒューマン「imma」が、創業者・野村徳七氏と共に登場。歴史の重みと革新的な未来像を一体化させた映像は、地上波テレビCMのみならず、日本経済新聞や朝日新聞など主要5紙の全面広告としても掲載され、年始から大々的に露出されました。

immaにとっては国内地上波初出演という快挙となり、SNS上でもその斬新な試みに対する反響が相次いでいます。特に、若年層からは「新たな価値観を感じる」という声が多く、店舗でのポスター掲示の依頼が通常の2〜3倍に増加するなど、確かな支持を獲得しています。

宮崎銀行:AIモデル「ドリームAI&ひなたこ」による新ブランディング

参考:宮崎銀行、AI modelが生成した専属AIタレント「ドリームAI&ひなたこ」をマーケティングに活用

地方銀行の宮崎銀行は、AIモデル株式会社の生成AI技術を活用し、同行のイメージカラーや地域性を反映した「ドリームAI(アイ)」と「ひなたこ」という2人のバーチャルキャラクターを制作しました。これらのAIタレントを通じて銀行のブランドイメージを刷新し、より親しみやすい存在として地域の人々に認知されることを狙いとしています。

住宅ローンやNISAなどのサービス紹介に登場し、テレビCM、Webバナー、店頭POP、バスラッピング広告など、幅広いメディアで展開されています。金融業界では珍しいバーチャルタレントの起用は斬新な試みであり、視覚的な親しみやすいキャラクター活用により、若年層やデジタルネイティブな層へのリーチも期待されています。地域密着型の銀行でありながら、最先端のAI技術を積極的に取り入れる姿勢が注目を集め、マーケティング関係者の間でも評価されています。

AIが創る、ひとりひとりに最適化された体験

一人ひとりに合った情報やコンテンツを届けることが、これまで以上に重要になっています。生成AIは、入力されたデータや個々の嗜好をもとに、映像や音声、テキストをリアルタイムで生成し、個別に最適化された体験を提供。誰もが同じものを見るのではなく、それぞれにパーソナライズされた内容が生まれることで、より深い関与や共感を生み出します。

KDDI:「さぁ、何やる?メーカー」

参考:三太郎CM10年目は人気イラストレーターと生成AIで描く『AI三太郎』!au お正月新CM 「さぁ、何やる?」篇

大手通信企業KDDIは、人気CMシリーズ「au三太郎」の正月キャンペーンとして、ユーザー参加型コンテンツ「さぁ、何やる?メーカー」を展開しました。特設サイトで「2024年にやりたいこと」とニックネームを入力すると、生成AIがパーソナライズされた歌詞・歌声・イラストを自動生成し、オリジナルミュージックビデオが完成します。同じ目標でも毎回異なる映像が作られ、ユーザーごとに唯一の作品が仕上がる仕組みです。

このキャンペーンはX(旧Twitter)を中心に展開され、TikTok向けの「なりきりAI三太郎」エフェクトも開発されました。ユーザーが生成したMVをSNSに投稿することで拡散され、生成AIの新たな活用方法として話題となりました。特に長寿CMシリーズにおいて、生成AIを取り入れた新しいユーザー体験は、企業の革新的な試みとして評価されています。

アサヒ飲料:「AI徹子の気まぐれお悩み颯談室」

参考:発売1年で1億2000万本の「アサヒ 颯」 AI黒柳徹子で更なる認知拡大、アサヒ飲料

アサヒ飲料は緑茶飲料「アサヒ 颯(そう)」のプロモーションとして、CMキャラクター黒柳徹子の声をAIで再現した「AI徹子の気まぐれお悩み颯談室」を展開しました。特設サイト上でユーザーが悩みを入力すると、AI徹子が音声で回答をしてくれるというものです。

このキャンペーンは、黒柳徹子という国民的キャラクターのAI化が話題となり、多くのメディアで取り上げられました。期間限定の試みでしたが、「声が本物そっくり」「面白い企画」とSNS上でも好評を博し、商品と連動したプロモーションとして注目を集めました。

生成AIが生み出す新しい体験

プロモーションは「見るもの」から「体験するもの」へ。生成AIの活用によって、リアルタイムで応答するAIガイドや、対話によって展開が変化するストーリーなど、双方向のコミュニケーションが可能になっています。固定されたコンテンツを発信するのではなく、その場で生み出される情報や演出が、より深いブランド体験を生み出しています。

東京ゲームショウ Digital World 2024:バーチャル空間でのAIガイド

参考:電通グループ、「東京ゲームショウ 2024」でAIキャラクターのバーチャル体験とECへの効果を検証

東京ゲームショウ2024では、オンラインメタバース会場「Digital World 2024」にAIキャラクターを活用した新しいバーチャル体験が導入されました。来場者はPCやVRデバイスを通じてメタバース空間に参加し、会場内であればいつでもAIコンシェルジュを呼び出して案内を受けることができます。生成AIを活用したこのシステムは、訪問者ごとに異なる対話を展開し、個別にパーソナライズされた情報を提供する仕組みになっています。

AIがリアルタイムで質問に応答し、イベントブースの情報やおすすめの体験を案内することで、よりスムーズなイベント体験が可能になりました。また、タレントアバターとのショッピング体験や、生成AIを活用したユニークな演出も好評で、メタバースイベントの新しいスタンダードを築いたと言えるでしょう。

映画『温泉シャーク』:映画宣伝の新時代

参考:世界初*の映画プロモーションAI、「温泉シャーク」映画プロモーションに登場!

2024年公開の映画『温泉シャーク』は、AIを活用した革新的なプロモーションを展開し、話題を集めました。その中心にあったのが、宣伝専用に開発された対話型AI「サメAI」です。このAIは、映画の世界観を反映したキャラクター「鮫三郎(さめさぶろう)」としてユーザーと会話を行い、公開前から観客の興味を惹きつけました。

サメAIは、ユーザーの質問に応じて映画の見どころや制作裏話をユーモアたっぷりに回答し、SNS上でも「#温泉シャーク」「#宣伝AI」といったハッシュタグが拡散されるなど、大きな話題となりました。特に、映画の予告編に登場する犬に関するやり取りが注目を集め、「#犬は死にません」というタグがファンの間で流行しました。この盛り上がりを受けて、AIが犬に関する質問に画像付きで回答する新機能を追加するなど、リアルタイムでのアップデートも行われました。

その結果、『温泉シャーク』はインディーズ映画ながら全国30館以上で公開され、ミニシアターランキング1位を獲得するなど、異例のヒットを記録しました。AIを活用したインタラクティブなプロモーションが、映画の認知度向上と観客のエンゲージメント強化に大きく貢献したといえます。

まとめ

以上、AIを活用した最新のプロモーション事例を紹介しました。

生成AIの活用が広がる一方で、企業は新たな課題にも直面しています。AIが生み出すコンテンツの品質管理やブランドの意図との整合性、倫理的な配慮、さらには消費者が「AIによる体験」にどこまで価値を感じるのかといった点が、今後の課題となるでしょう。しかし、それらの課題を乗り越えた先には、これまでにない可能性が広がっています。

今後、技術の進化とともに、AIはさらに洗練され、より自然で魅力的なブランド体験を生み出していくでしょう。


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